米西部で水不足が懸念されている。温暖化でコロラド川の流量が減少し、水源をめぐる地域間の裁判沙汰(さた)にも発展している。温暖化が地域に与える影響を議論している国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第2作業部会は6日、第4次報告書を発表する予定だ。この中で温暖化による水資源の減少にも言及される見通しだが、米国ではすでに危機が現実になり始めている。
全長2333キロのコロラド川はロッキー山脈を水源とし、コロラド、ワイオミング、ユタ、ニューメキシコ、カリフォルニア、アリゾナ、ネバダの7州約2500万人に飲料水や農業用水を供給している。1990年代後半以降、干魃(かんばつ)が続き、川の流量が減少した。このため、流域の貯水量も落ち込んだことが米国科学アカデミーの調査で分かった。
4日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、メキシコ国境と近い西部は全米でも屈指の人口急増地域だ。このため、水需要が拡大し、水源をめぐる地域間紛争にも発展しだした。カジノと観光で発展したラスベガス(ネバダ州)が地方から水を引くパイプライン建設を計画したところ、上流のネバダ州北部とユタ州の農民らが反発。逆にユタ州で持ち上がるパイプライン構想にはネバダ州が中止を求めている。
「温暖化と人口増が結びつき、大きな水利権争いが起きる状況だ」とアリゾナ州の水利関係者は同紙に指摘した。
米国科学アカデミーは、温暖化で西部の降水量や河川流量の減少が一段と進むと予測する。これまで通りの水資源保全やリサイクルでは解決できないとして、「当事者同士が強力に協力し続けなければ問題は解決しない」と警告する。
温暖化の将来予測を担当するIPCC第1作業部会は2月、今世紀末の気温は最悪で6・4度上昇する恐れがあるとの報告書を発表した。第2作業部会の第4次報告書では、生態系や水資源、農業、健康、災害への悪影響が指摘されるとみられるが、水資源の危機はもうそこまで迫っている。
5日付の米紙クリスチャン・サイエンスモニター(電子版)によると、南米、アジア、欧州の重要な水源であるアンデス、ヒマラヤ、アルプス各山脈では気温上昇により氷河や雪塊、氷原の融解が進行している。オハイオ州立大の調査では、世界の山脈で氷河の消滅が過去5200年間で前例のないペースで進んでいるという。
Powered by "Samurai Factory"